「2025年問題」をご存知ですか?~
人口の20%が「後期高齢者」になり、単純労働に就くのは移民と外国人。医療と介護の安心は根底から覆る
街に人があふれ、子供たちが教室にぎゅうぎゅう詰めで授業を受けた、古き良き日本は二度と戻らない。
増えてゆく空席を、言葉の通じぬ人々が埋めてゆく。カネも絆も失った私たちは、どうなるのか。
10人に1人はボケている
「このまま無為無策で過ごせば、日本はとんでもない事態に見舞われます。
社会保障の破綻、際限のない増税といった山積みの問題が、10年足らずで一気に表面化するのです」
こう警鐘を鳴らすのは、政策研究大学院大学名誉教授の松谷明彦氏だ。
およそ1世紀も増え続けてきた日本の人口が、昨年ついに減り始めた。
「これから10年間で、日本の人口は700万人減ります。15歳~64歳の生産年齢人口が7000万人まで落ち込む一方で、
65歳以上の人口は3500万人を突破する。
2025年の日本は、団塊の世代が75歳を超えて後期高齢者となり、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という、
人類が経験したことのない『超・超高齢社会』を迎える。これが『2025年問題』です」
東京五輪が終わったあと、日本の姿は、今とは大きく変わっている。
現在と同水準の人口を維持できるのは、東京・神奈川・千葉・埼玉の首都圏と、愛知・沖縄・滋賀のみ。
青森・岩手・秋田・山形・福島の東北各県や、中四国の大半の県は、軒並み1割人口を減らす。
働き方も、大変化に見舞われる。厚生労働省のデータによれば、’00~’10年の10年間で、
事務職や工業系技術者は14%、農家や漁師は30%、また土木作業者や建設技術者は40%も減っている。
一方、介護関係職員は倍以上に増加し、葬儀関係者も1・5倍に増えた。
この傾向は、2025年までにますます加速する。
若者が減り、老人が増える。
何かを作る仕事に携わる人が減り、介護や葬儀に携わる人が激増する。
もはや、国全体が老境に入ってしまったような状態。
「現時点でも、軽度のものを含めれば、少なくとも820万人が認知症を患っているという厚労省のデータがあります。
それに基づけば、2025年には今の1・5倍、1200万人以上が認知症になっていてもおかしくありません。
全国民の10人に1人がボケている。
そんな国が成り立つのか、という疑問がわいてくるが、あと7年で画期的な対策が見つかるとも思えない。
特別養護老人ホームには順番待ちの長い列ができ、認知症の特効薬ができる気配もない。
もはや策は尽きている。
病院がどんどん潰れる
経団連の榊原定征会長は、ついに「移民に頼らざるを得ない。ドアを開けに行かないといけない」と明言。
自民党も特命委員会を今月設置し、まさに移民受け入れの議論を始めようとしている。
移民や大量の外国人労働者を受け入れた2025年の日本が、どんな国になるか?
ひとつ言えるのは、その「劇薬」をもってしても、事態は好転しないということだ。
2025年、まず医療がパンクする。
厚生労働省の推計によれば、2025年の医療保険給付は総額54兆円と、現在より12兆円以上増える見通しだ。
衰えゆく日本の国力で、とうてい賄える額ではない。
「破綻シナリオ」を回避するために、国は医者と病院を減らしにかかっている。
患者は確実に増えるにもかかわらず。
「今、全国で病院の身売りや倒産が相次いでいます。
実は日本の医師数は、先進国最低レベルです。
医者がいなければ、治療できない。治療できなければ、医療費が膨らむこともない。
つまり、医療費を抑えるため、医師の数を減らし、病院の数も抑えているわけです。
2013年には、埼玉県で25ヵ所の病院を36回たらいまわしにされて、患者が亡くなる事件もありました。
地域の病院が減ってゆくと、こうした事件が全国で多発するでしょう」
7年後、全国の入院患者数は138万人(1日あたり)を超えている。
だが、全国の病床数は今でさえそれに足りない134万床で、今後さらに減らされる見通しだ。
確実に、数万から数十万人の病人が、病気にかかっても入院できなくなる。
少し体調が悪いくらいで、いちいち病院に行くな。いや、行きたくても行けない?それが常識になるのだ。
介護も同様である。介護保険制度が設けられた’00年に比べ、現在、介護関連の職につく人の数はおよそ4倍にも膨らんでいる。
それでもまだまだ、人手が足りそうにない。
「これからの日本は、地方の人口は減っていきますが、大都市圏では人口はあまり減らず、同時に高齢者が激増します。
首都圏では、高齢者人口はおよそ1000万人にも達するでしょう。
おそらく2025年を待つまでもなく、あと数年で、首都圏の介護施設は足りなくなります。
『介護クライシス』と懸念されている事態です。
誰にも介護してもらえず自宅で放置され、亡くなる人が急増する。
『このまま東京にいたらまずい』と考え、地方に移住する高齢者も出るでしょう。
しかし、移住できない大多数の人々は、厳しい状況に追い込まれる」
年金なんて出るわけない
さらに、多くの国民が不安に思いつつ、半ば諦めているのが、年金の行く末だ。
2025年にも、年金制度そのものは残っているでしょう。
しかし、その内実が、「破綻同然」の水準にまで崩壊しきっていることは間違いない。
長年、年金を研究してきた、社会保険労務士の某先生が分析する。
「年金をはじめとする社会保障費は、現在の約120兆円から、2025年には総額150兆円に増えると考えられます。
しかし、’14年に厚生労働省が行った将来予測は、『現役世代の賃金はこれから毎年上がり、10年後の保険料収入は40兆円に達する見込みだ。だから年金は破綻しない』といった、実態からかけ離れた仮定が満載で、明らかに『絵に描いた餅』でした。
現実的な値をもとに計算すると、遅くとも2030年代前半には、年金積立金は枯渇します。『所得代替率(現役時代の給料と年金支給額の比率)50%を死守する』という政府の目標も、おそらく叶わないでしょう」
年金破綻を防ぐには、2025年まで、経済成長と毎年1・5%ずつの賃金アップを同時に達成しなければならないという。だが日本人の平均賃金はもう20年間も連続で下がっており、しかも働き手は減る一方だ。
「かくなるうえは、消費税増税しかない」というのが財務省の理屈だが、消費税を1%上げても2兆円しか税収は増えない。10年足らずで15%も消費税を上げるというのは、とてもじゃないが、ムチャな目標である。
「2025年というのは、今まさに行われている、60歳から65歳への年金支給開始年齢引き上げが最終段階にさしかかっている頃です。おそらく、年金の実質的破綻は誰の目にも明らかになっているでしょうから、『70歳への支給開始年齢引き上げ』も実行に移されるはずです」(前出・大曲氏)
ただでさえ、物価や賃金の変動に合わせて給付額を減らす「マクロ経済スライド」で、2025年には今の8割前後まで年金給付額が減っている。それに加えて、残念ながら現在の50代から下の世代は、「ようやく年金がもらえると思ったのに、まだ待たされるのか」と嘆くはめになるのだ。
介護の人手は足りず、病院に行ってもすぐに追い返される。認知症の高齢者が、わずかな年金を握りしめて、閑散とした街中を歩き回る?後篇では、そんな「絶望の国」と化した、未来の日本で起きる悲劇を見てゆこう。