受給金額は、受け取り時期によってどれくらい変わる?
★「繰り上げ受給」で受け取りを1ヵ月早めるごとに、受給額が0.5%減る
年金は、「繰り上げ受給」や「繰り下げ受給」も可能です。
通常は65歳から受け取れるものを、早め(60歳~64歳)に受け取ることを「繰り上げ受給」、
遅め(66歳~70歳)に受け取ることを「繰り下げ受給」といいます。
繰り上げ受給は60~64歳の間に請求し、1ヵ月単位で繰り上げることができます。
年金は終身にわたって受け取ることができるため、早く受給できると聞くと魅力的に感じますが、
「0.5%×繰り上げ月数」という減額率によって、年金受給額が減額されるというデメリットもあります。
受給開始年齢を60歳に繰り上げるとすると、30%(=0.5%×60ヵ月)の減額です。
たとえば会社員(平均年収550万円、厚生年金に38年加入)の場合、65歳から受け取る年金額は、約15.9万円(月額)です。
繰り上げ受給で60歳から受け取るとすると、15.9万円×70%(100-30%)=11.1万円(月額)になります。
この額を、生きている限り受け取り続けることができます。
差額を計算してみましょう。
1ヵ月繰り上げるごとに0.5%減額されるため、年間6%減額されることになります。
100%÷6%=16.6なので、16年以上生存すると損になります。
そのため、76歳以降も生存の場合には、繰り上げ受給を「しない」ほうがお得になります。
2022年4月1日以降は、減額率が1ヵ月当たり0.4%に変更される予定です。
そのため、年間4.8%減額されることになり、60歳から20年以上(100%÷4.8%=20.8)、
つまり80歳以降も生存の場合には繰り上げ受給を「しない」ほうがお得ということになります。
★「繰り下げ受給」で受け取りを1ヵ月遅らせるごとに、受給額が0.7%増える
繰り下げ受給は、66~70歳の間に請求し、1ヵ月単位で繰り下げることができます。
繰り下げ受給のメリットは、遅らせるごとに年金受給額が増額されることです。
増額率は「0.7%×繰り下げ月数」です。
たとえば、受給年齢を70歳に繰り下げた場合は42%(=0.7%×60ヵ月)増額されます。
先ほどの例の会社員(平均年収550万円、厚生年金に38年加入)の場合、繰り下げ受給で70歳から受け取るとすると、15.9万円×142%=22.6万円(月額)になります。
この額を、生きている限り受け取り続けることができます。
差額を計算してみましょう。
1ヵ月繰り下げるごとに0.7%増額されるため、年間8.4%増額されることになります。
100%÷8.4%=11.9なので、11年以上生存すると得になります。
そのため、81歳以降も生存の場合には、繰り下げ受給を「する」ほうがお得です。
2022年4月1日以降は、75歳まで繰り下げることができるようになる予定です。
そのため、75歳から年金を受け取る場合は84%(=0.7%×120ヵ月)増額され、
先ほどの例の会社員(平均年収550万円、厚生年金に38年加入)であれば、15.9万円×184%=29.3万円(月額)になります。
夫婦で考える、年金はいつから受け取るとお得?
★男性は65歳、女性は70歳からがお得
夫婦で老後を過ごす場合、いつから年金を受け取るのが正解なのでしょうか?
夫婦共に平均寿命まで生きると仮定して検証してみましょう。
日本人の平均寿命は、男性が81.25歳、女性が87.32歳です。
前述のとおり、受給開始年齢を60歳に繰り上げると、76歳以上(2022年4月1日以降は80歳以上)生きる場合は損になります。
平均寿命と比較すると、繰り上げ受給は損になると言えるでしょう。
また、81歳以上生きる場合は受給開始年齢を70歳に繰り下げたほうがお得です。
81歳というと、男性は平均寿命とほぼ同じであるため、お得になるかは微妙なところです。
女性はそこから6年長く生きる可能性があるため、お得になる可能性が高いと言えます。
★お得というだけで決めるのは危険
とはいえ、現実はそう単純ではありません。
60歳で退職するのかどうかや貯蓄額、健康状態によって、受け取りはじめるべき年齢は異なります。
たとえば貯蓄額が少なく退職金もないため、できるだけ早く年金を受給したいと考える方や、
十分な貯蓄や退職金があり、年金がなくても70歳まで余裕を持って生活できる方もいるでしょう。
すぐにでもお金が欲しい方が、長い目で見るとお得になる可能性が高いからといって、受給開始年齢を70歳に繰り下げるのは得策ではありません。
それぞれの夫婦の経済状況や老後に対する考え方によって、繰り上げ受給や繰り下げ受給をするのか、65歳から受給するのかを検討しましょう。
まとめ
2020年現在で50歳以下の方は、国民年金も厚生年金も65歳からもらえます。
年金の受け取りを早める「繰り上げ受給」や、受け取りを遅らせる「繰り下げ受給」という制度が存在するため、
60歳~70歳のうち好きなタイミングから受け取りはじめることも可能です。
ただし、65歳より早く受け取りはじめる場合は「減額」、遅く受け取りはじめる場合は「増額」される点に注意しましょう。
平均寿命だけを考えると、男性は65歳から、女性は70歳から受け取りはじめるのが最もお得と言えます。
実際には、夫婦の経済状況や健康状態、退職のタイミングなども踏まえて、受け取りはじめる年齢を決めましょう。
人生100年といわれる現代、65歳で退職すると、100歳まで35年もあります。
その35年間で趣味を目一杯楽しみたい、年に数回くらい海外旅行に行きたいなど、
夫婦の希望を今のうちからよく話し合っておくことが、豊かな老後生活への第一歩となります。
記事提供元:株式会社ぱむ